第6回戸山オープンカレッジ(TOC)報告

toyama

 7月6日(土)第6回戸山オープンカレッジ(TOC)が戸山高校にて開催されました。今回は、久々に科学領域のテーマで「金星にカメラを飛ばした!」と題して、元東京大学教授の岩上直幹氏(昭44、天文班OB)にお願いしました。今回の特徴は、何といっても参加者45名中、現役の戸山生が12名も参加したということです。これまでビラやポスターで校内でも呼びかけたものの、なかなか参加率が上がらなかったのですが、地学担当の内記先生にもご参加頂き、生徒にも呼び掛けて頂いたのが功を奏したようです。

 講演は、冒頭「あかつき」の金星周回軌道投入の想像図が示されましたが、そこに小さく「これは失敗」と書かれていて、予想外の状況にチームがどのように対応したかという舞台裏の話から始まりました。なぜ金星を対象にしたか?、地球と最も似た惑星でありながら、全く違う環境を呈する金星の謎(自転が惑星の中で唯一逆方向でかなり遅いとか、大気として厚い硫酸雲が、その自転とは反対方向に猛烈なスピードで回っているなど)に興味をそそられる状況が作り上げられました。
 岩上氏の担当する赤外カメラを積んだ「あかつき」は、2010年に打ち上げられたものの、まさかの周回軌道投入に失敗。5年後に再挑戦し成功をおさめます。しかし、想定外の燃料消費のため、その後もカメラの姿勢制御に苦慮しつつ、それでも目的の金星表面雲の画像を送り続けます。
 後半は、その送られてきた画像から雲の下の地形情報や雲そのものの流速調査などにより、何が解明できたかの説明でしたが、1つ謎が解けると2つの新しい謎が出てくるというくだりが印象的でした。そして最後には、座右の銘としてポアンカレの言葉から、「自然は美しい、美しいから研究に値する」を引用し、宇宙への壮大な謎解きはまだまだ続くということを暗示して中締めとなりました。
 講演後、在校生からも活発な質問が出て、それに答える中で、天文を職業とすることの難しさも語られました。これに対し、内記先生からの「戸山の『天文少年(少女)』に夢を与えて下さい」という要請にちょっとたじろぐ場面も。しかし、皆さん金星への身近な想いを吸収したようでした。

TOC部会 中山一夫(昭44)

第6回TOC写真