Hawai'i 第3回SSH海外サイエンスセミナー報告

                            都立戸山高校 物理科教諭 霜山 一夫

 SSH 2007ハワイセミナーは昨年に引き続き2回目となる。今年は他のSSH校で実績と評判の高い長谷川久美子さんへハワイ島のガイド全般を依頼したことが大成功につながった。彼女の人柄と豊富な知識と明快な説明により、観光旅行では到底、体験できない、内容の濃く質の高いハワイ実習が実現した。

 事前学習として、新学期より毎週月曜日の放課後に集まり、ハワイについての準備を重ねた。役割分担や各自の探究課題の設定から始まり映像学習、ハワイ版星座早見盤とすばる望遠鏡模型とハワイ島立体模型の製作、パスポートの取得方法や海外旅行の準備の他、昨年のハワイセミナー参加者による経験を生かした植物・すばる望遠鏡のレクチャーも加わった。ハワイ大学在籍の落合成紀君(平成17年卒業生)も6月に帰国した際に昨年の参加者とともに英語指導を引き受けてくれた。
  この他、休日に国立天文台へ出かけ、家正則教授から400億円のすばる望遠鏡を6億円の予算で10倍の性能にした次世代補償光学装置などの説明や早稲田大学高等学院の加藤徹教諭のキラウエア火山事前指導なども企画した。また早稲田大学高等学院の生徒と情報を交換することにより、同世代から刺激を受けて、自分たちはもっとしっかり準備しなければまずいなという雰囲気に変わってきた。

 今年は昨年の班ごとの発表から個人ごとの課題設定に変更し、報告を義務づけてハワイ実習に臨んだ結果、生徒は目的意識をもって各自のテーマをもとにネイチャーガイドに積極的に質問しながらハワイ島の実習を有意義に過ごした。写真やメモをとる場面が多く見られ、エネルギー問題・ゴミ問題・溶岩トンネルの調査・溶岩の冷え方・アア溶岩とパホエホエ溶岩の違い・地中からの蒸気の温度測定・オリビンの生成・地形の変遷・各種植物の生態系・タロイモを発酵させたポイの試食、美しい白尾熱帯鳥の観察、など時間をかけた内容の濃い実習でした。
  8月の誕生石ペリドットという宝石でできたグリーンサンドビーチも巡検することができた。イミロア天文博物館ではカメハメハスクールの生徒が伝統のチャントと雪の女神ポリアフの歌を聞かせてくれた。ホテルに戻ってからも、ミーティングのあと、夕食をはさんでハワイ大学の落合成紀君と英語での会話を通して交流をしながら英会話の体験学習をした。ヒロのダウンタウンの散策も加わり、ハワイ島の魅力をいっぱいに感じることができた。オアフ島のワイキキの繁栄が人工の虚栄に映ったほどです。このようにハワイ実習ではお金に換えがたい貴重な体験や人々との交流をすることができ、とても熱い気持ちとなり再び訪れたいと生徒達から聞こえてきた。

 帰国後は戸山祭の発表へ向け、大量のメモや写真整理、映像の整理を行い、疑問があればeメールでガイドに質問をしながらまとめあげ戸山祭のポスターセッションを行った。その後、インターネット、図書館などでさらに調べてまとめ上げ、報告会にてパワーポイントで口頭発表を行う。報告会では発表する3名を選ぶために予選も行っている。ハワイ実習を行っている埼玉県立川越高校と早稲田大学高等学院との交流会の後、SSH関東近県合同発表会に参加する予定である。

 ハワイ実習前にテーマ設定と事前学習をし、ハワイでは雄大な自然と最高のネイチャーガイドから刺激を受け、ハワイ実習後に短時間で、ポスター及びパワーポイントにまとめ上げ、発表をするまでできた。後半からは生徒が主体的に動き出し楽しみながら互いを高め合った。この成果へ導いたのは、2年生の多くが昨年度のSSH探究基礎講座を経験した意欲的なメンバーであり、一年間、探究基礎講座で自ら探究してまとめて発表することを鍛え上げられた成果だと強く感じた。2年生はリーダーシップを発揮して、SSH初心者の1年生をよくリードしてきた。

 これこそSSHの求める将来の科学的人材を育てる素養のひとつ、「自己学習力」を伸ばした成果だろう。あらゆる事物・現象に興味・関心をもち、自ら課題や問題点を見つけるテーマ設定能力、その解決のために必要な手段の工夫をする能力。必要な知識・技術を身につける情報収集能力、データ整理や考察をしながら論理的思考力、的確に相手に伝えるプレゼンテーション能力などが高まっている。あわせて、ハワイ実習を通して役割分担をこなしながら生徒間の結束は高まり、協調する姿勢が強まった。
 ハワイ実習を通した探究活動を体験できたのは一部の生徒達ではあるが、このように良質の経験を若い感性で受け止め、困難を能動的に克服し多方面で活躍する人材の育成につながる芽を与える有意義なプログラムであることはまちがいない。
 最後にこのハワイセミナーを応援して頂いた城北会、戸山会の方々に感謝致します。
                                      MAHALO


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