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  Report For Toyama High SSH(2007)

                 University of Hawaii at Manoa Shigeki Ochiai(平17)

 戸山高校のSSH指定が五年間再指定されたことにより、2007年度もハワイ研修を実施することができました。喜ばしくも、私自身も二回目の引率者の一員(引率者と言って良いのかは疑問ですが)として、また同行させていただきました。もちろん、2006年度の生徒達の性格も違えば、雰囲気も違うので、新鮮な気持ちで生徒と接することができたと思います。昨年の報告書は、「生徒の様子があまり書かれていない」のクレームを同窓生に指摘されたので、今年は生徒の様子を中心に書いていきたいと思います。

 さて、毎回生徒たちの私に対する第一印象が最悪なので、今回ばかりはと、気合を入れたのですが、相変わらず状況は打開できず、ハワイに上陸した後でようやく打ち解けるという惨敗でした。第一印象は未だに大きな課題のようです。空港に到着した生徒たちは緊張と興奮をミックスさせたような状態でした。とりあえず、長距離の飛行機を乗り越えたという安堵の様子も伺えました。そして誰もがハワイに上陸した時に感じる、あのなんとも言えぬ空気、雰囲気、そして時の流れを感じてもらえたのは何よりでした、悲しくもその感動を私はもはや失ってしまいましたが。とにかく爽やかでゆっくりなのです。

 昨年とは違い(ツアーはいつも進化しているのです)、今回の旅はハワイ島からスタートしたので、観光地としてのオアフ島より大自然としてのハワイ島が生徒たちに衝撃を与えました。生徒たちはヒロ空港の規模の小ささ、そしてバスで行くイミロア天文博物館までの風景の一つ一つに反応していました。イミロア天文博物館というところは、ハワイの歴史を中心にポリネシアの航海技術、神話、そしてもちろん天体について幅広く展示しているところであり、またプラネタリウムなどを除けば生徒たちが始めて訪れる100%英語の世界でした。僕のグループの方は100%の英語で館内ツアーが行われました。感心したのは、英語環境にもめげず質問をする姿勢でした。英語のネイティブスピーカー(英語が母国語の人)に対しての質問などの時には、なるべく助けないようにしていたのですが、何とか単語を搾り出しながら一所懸命に立ち向かっていました。”疑問”その物こそが生徒の推進力になったようです。しっかり事前学習をしているお陰で、天体などの専門分野に関しての僕の通訳の間違いを指摘してくれた事もしばしば、お恥ずかしい限りですが。

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 そしてもう一つ昨年とは異なる所が、長谷川久美子さんと言う、素晴らしい現地ガイドの方に同行して頂いた点です。長谷川さんについては霜山先生の報告をお読みください。

 今期のメンバーはハワイで見られる植物に興味を持っている生徒が多く、特にイミロア天文博物館の外に育てられている植物に関しての説明には、食い入るように聞き入っている生徒たちでした。実地研修では、実際に歩きながらハワイの植物環境を検分できたので、資料だけでなく、目で見ることにより、生徒たちの理解は深くなったのではと思います。キラウエアイキトレッキング、溶岩トンネル、ましてやエンドオブロード(割と新しい溶岩の上を歩くコース)、至る所で動植物が観察できたので、生徒たちは終始歩きながらもメモをしっかり取ると言う、スタイルを貫いていました。

 昨年同様、研修の一番の目玉である「すばる望遠鏡」を今年も見学できたのは、とても素晴らしい事でした。まずそこへ行くための、標高4000m越えのマウナケア登頂すら生徒にとっては初めての経験でした。高山順応するための鬼塚ビジターセンターで我々は初めて空気の必要性を知り、そして生まれて初めて「意識をして呼吸」をする事になります。呼吸に関してですが、今年の生徒達のプロジェクト(是非戸山祭での報告展示を見ていただきたかったのですが、皆様見られたでしょうか?)の一つで「高所反応」と言う今までに無いトピックありました。心拍数そして血中酸素濃度を同時に測れる装置を持参し、平地と高地での違いを、実験的に求めるものでした。この「実験的」と言うのがポイントで、普段ではなかなかできない上に、ただのペーパーワークより数段知識がつくのです。しかも面白い事に必ず実験を行うと、セオリーとは違うことも起きます。むしろ、セオリーに合わない事が大多数なのです。今回もデータが彼らの仮説とは異なる数値を出しました。その解明を悪戦苦闘しながらやっている事でしょう。

 話が飛んでしまいましたが、折角プロジェクトの話が出たので少しお話させて下さい。先日(十二月半ば)冬休みの休暇で日本に帰ってきた私に、生徒達が特別に発表会を開いてくれました。発表会では幼稚ですね、失礼、以後プレゼンと称しましょう。折角僕の為に特別にプレゼンを開いてくれたのに、こちらはお土産すら持っていかず申し訳ないことをしてしまいました。(買う気持ちはあったのですが。。。)さてプレゼンでは、一人ないし二人一組で、研修中に興味を持った題材を研究、そして調査した結果をパワーポイント(マイクロソフト社の発表用のソフト)で説明してくれました。一つのプレゼンが終わる事に、感じたことや、改善点を伝えるのが観客としての僕の役目でした。まず衝撃だったのが高校1,2年生の生徒がパワーポイントを巧みに使っている点でした。日本でも、そして特にアメリカなどではそうですが、プレゼンにパワーポイントは必需品で、その使い方によってプレゼンの評価が決まるのです。ただ使っているのではなく、効率よく効果的(これが出来ない人が山程いるのです)に使っているのを見たときには高校生と言うことを忘れてしまいました。これこそ社会に出てから必要になる技術であり、それを高校生の時分から学べるのは大変すばらしい事だと思います。しかもプレゼンに出てくる情報のほとんどは、彼らが研修中に必死に続けていたメモから来ているのです。ほとんどの生徒が情報に加え、効果的なアニメーションや写真を使い聞き手を常に飽きさせない工夫を凝らしていました。

 一人の生徒が他に類を見ない面白いプレゼンをしてくれました。彼女のテーマは、ハワイで最も有名な神話の一つ「オヒアとレフア」(世界でも珍しい、花と木に別の名前が着いているハワイ固有の植物)でした。前半はオヒアとレフアの生物的な情報など、一般的な情報でした。が、後半部分に驚かされました。彼女は自分で作った視覚効果を使って、紙芝居風にオヒアとレフアの伝説を説明してくれたのです。生徒の「発想力」そして「創造力」には敵いません。もう一つ紹介しましょう。ハワイの「食」をテーマにした生徒がいました。彼女は、時代の推移と一緒に変化した食生活を調べていました。ご存知の通り、今のハワイの食生活は様々な文化の合わせ技で、こちらでは「Pacific Rim Cuisine」と洒落た呼び方をしております。もちろん移民者が来る以前は違いました。その推移についてが、彼女のテーマでした。彼女はいくつかのハワイ固有の料理を自分で作り、メンバーに食べさせアンケートを取っていました。実地をして感想を聞いていたのです。実地(大げさに言えばマーケティングでしょうか)と言うエッセンスを加えるだけで、なかなか説得力のあるプレゼンになるのです。

 ここで全ての生徒の発表を挙げられないのはとてもフェアじゃありませんが、ページの都合上、許してもらうことにします。生徒諸君申し訳ない。是非発表を見学できるチャンスがあれば、足を運んで見てください。皆様の興味が、生徒たちにとって何よりの御褒美となるのです。これは提案ですが、今度ハワイ料理のプレゼン会を開いてはいかがでしょうか、さぞかしおいしいプレゼンになることでしょう。

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 さて随分話が飛んでしまいました。ハワイ研修に戻しましょう。「すばる」ですね。すばるは言うまでも無く日本が誇る世界一の観測施設です。本物のすばるを専門の方々に直に説明して頂いたこの経験が生徒にとって大きな刺激になったようです。空気が薄いにも関わらず、質問もメモもしっかりしていました。さすがにやりすぎた子はダウンしていましたが。山頂には日本だけでなく様々な国が観測施設を建てています。その中でも「双子」の愛称を持つW・M・ケック天文台にも足を運ぶことが出来ました。すばるとは違い鏡の部分が一枚では無く、36枚の小さな鏡を繋げて蜂の巣のような形をしています。その代わりすばるの8.2mに対してケックは10mです。それぞれの観測施設が特徴を持っていて、一概にどれがトップなど言えないのが山頂の面白さです。その山頂で見た夕焼けは正に圧巻。この場で言葉では正確に表せられないのが残念です。雲で出来た大海原に真っ赤な太陽が静かに沈み、その壮大な光を受けた望遠鏡達が作り出すシルエット。荘厳と言う言葉を初めて肌で感じる場所。それが聖なる山マウナケアなのです。その感動も冷めやまぬまま夜の星空観測へと向かいました。星空という表現はそこでは陳腐な言葉になってしまいます。銀河と言うべきか宇宙と言うべきか、もしくは言葉で表しては失礼なのかもしれません。雄大にそして堂々と流れる天の川。もはや今は存在しないはずの星が届ける光。その中を迷うことなく回り続ける衛星。一つ一つが重なり合うことで作り上げる一枚の絵。一日の締めくくりとしては贅沢すぎる程でした。

 今年で二度目となるハワイ研修も、成功で終わることができ大変喜ばしく思っています。またこのような機会に今年も参加させて頂いた事を感謝致します。そして実施までに尽力を尽くされた先生方にも感謝いたします。この研修は霜山先生、岩越先生抜きでは決して実現できませんでした。いつも一番楽しい場面しか関わることができず、大変な計画の段階ではなかなか協力できず先生方には申し訳ないと思っています。その代わりこの様な報告を通して、皆様にこのハワイ研修の素晴らしさを伝えるのが私の使命だと思っております。次回も戸山の生徒たちを心よりハワイでお待ちしております。

 最後になりましたが、SSH海外を色々な面でサポートして頂いた城北会そして戸山会の方々に感謝を申しあげます。

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