先生列伝(69)横田 浩二 先生 戸山高校新聞 第195号 1982年3月15日
 「斜に構えた二枚目先生 実はやさしいお兄さん」


1982年卒業アルバム

1984年卒業アルバム

 職員室に入ってこう考えた。「智に働けば角が立つ。情に掉させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかく教師は付き合いづらい・・・」。さて、二十数年ほど前、本紙で連載され、好評を博した「先生列伝」を復活させることになりました。これを機に先生の人間性を多いに理解し、先生と生徒との溝を狭ばめることが出来たら幸いです。
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 「今の生徒は自由をはきちがえているんじゃないかな。例えば遅刻とか、上下ばきの区別とか、少しひどすぎるね。だらしない。もっと自由を活用するようにしたらいいんじゃないかな」と少々きびしい御指摘。横田先生は戸山に来られてまだ一年足らずの新しい先生だ。現在、二年生の倫社、世界史を担当なさっている。昭和二十八年十二月九日生まれの先生は当年とって二十八歳。戸山教師陣で一番のヤングパワーを誇る。生まれは北海道。小学校六年生の時、東京に来られたそうだ。新宿区立牛込三中、戸山を経て、東京教育大学を卒業された。我々の先輩にあたる。

 「僕が戸山にいたころの方が雰囲気が暗かったかな。制服があったし、女子が今よりちょっと少なかったせいかな。今の生徒は活気があるし、楽しくにぎやかにやっているね。そういう意味では昔の方が落ち着いていた。今と昔で一番違うのは、今の生徒の方がずっと幼稚だということだね。まあこれは世の中全体の風潮だな。うん、僕が入学したころはちょうど、学園紛争とか、安保の問題とかあったころで、よく生徒会か何かで政党の人を呼んで話を聞いたり、シンポジウムや討論会をやったなあ。今はそういうこと全然やらないみたいだね」。高校時代の先生は、ごく普通の、おとなしい生徒だったとか。三年間、地歴部で活躍なさった。体操部にも所属したことがあるそうだ。

 「趣味は、読書にドライブに音楽鑑賞だね。本は主に外国文学だな。好きなのはドストエフスキー。ドライブは夜高速道路なんか・・・(と言いかけて止められた)とにかく運転するのが好きだね。日曜日とか、軽井沢なんかへ行くよ。音楽は何でも聞くね」と多種多芸な先生だ。

 横田先生は戸山では珍しいタイプの授業をなさる。始めは黙々と板書、それから説明。これを称して「中学校の授業」などという生徒もいる。その独特な断定的口調には反発する生徒も多かったが、今では「そこがまた、ステキなのよ」と騒ぐ女生徒も。また、共通一次を意識して授業をしているのではないか、という声もあるが・・・。

 「高校は義務教育じゃないんだからね。みんながヤル気があるということを前提に授業をしている。一つ一つ細かくやっていくよりも、高校では、一通り全部やった方がいいと思っているので、教科書はできるだけ終えるようにしている。共通一次は全然意識していないよ。あれが施行される前から今と同じ授業をしていたからね」とのこと。

 昼休みのパン売り場で、生徒に負けじと、生存競争に参加なさっている先生の姿を見たことのある生徒も多いだろう。横田先生は小平市に一人住まい。実はまだ独身なのだ。お弁当を作ってくれる人はいないらしい。
 「そろそろ真面目に考えなけりゃいけないと思っているんだけどね・・・候補?全然いないよ」。
 横田先生は我々と十才足らずしか違わない、とても親しみやすい先生だ。「ただ子供が好きだから」教師になったという横田先生。おそらくは、頼りがいのある兄貴分として、我々の良き相談相手になって下さるにちがいない。戸山熟練老年教師陣に新風を吹き込んで下さることを期待しよう。  (通はやっぱりオレンジジュースね!)

横田 浩二 先生 世界史 戸山高校在職 1981〜91



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