今回の先生列伝は、二階東端の美術室の主、冨士崎進二先生をご紹介します。
先生は昭和三年十一月に本郷(今の文京区)でお生まれになって以来、東京以外に住まれたことのない根っからの江戸っ子でいらっしゃいます。そんな先生は、少年時代から文学や絵画に強い興味を持っていらっしゃったそうで、旧制中学卒業後、両親の反対を押し切って東京高等師範の芸術科へと進まれました。その後教員となられ、三番目の学校、戸山へいらっしゃってから早くも十七年。デッサン、油絵、凹版画といった普通の作品から、他の学校では技術をお持ちの先生がおられないため出来ない大谷石の彫刻や陶芸(焼きもの)まで取り入れた、戸山ならではの授業を築き上げられました。先生はこういった授業によって「創造の世界を体を通じてとらえていくきっかけをつかんでほしい」と願っていらっしゃいます。また「美術は評価されることよりも、努力して作品を作ることが大切」と語っておられます。
先生の御趣味も当然美術と思いきや、「美術は仕事です」という御返事。「個人での旅行や洋の東西を問わず美味しいものを食べ歩くこと」が御趣味だそうです。「歴史の重みの感じられる建築や彫刻を見て回る」のがお好きだそうで特に奈良がお気に入りとか。一方“美味求真”の方は、なんと一食八千円のお弁当だの予約しないと買えない和菓子だのを食べ歩いていらっしゃるという、超豪華版!!「本当に美味しいものは(値段も)高い」そうなんですが、私達の手の届く範囲でお尋ねしたこころ、京都西陣にある『塩芳軒』の花びら餅が予約なしでOKとか。二年生は修学旅行の折にぜひどうぞ!
最後に戸山生については「この十年で良くも悪くもずいぶん変化があった。明るくなった反面、人の話が聞けなかったり、受験のためだけの勉強と考えてしまったり、自分自身の主体的な生活姿勢が失われてきている。現状に疑問を持つと共に、自分の生活・言葉・思考を持つよう努力してほしい」と語られました。 (智)
冨士崎 進二 先生 美術 戸山高校在職 1968〜89