先生列伝(79)桝本 摂郎 先生 戸山高校新聞 第211号 1985年5月18日
「博学のヒケツは読書? 人間の深さが見える世界史」


1985年卒業アルバム

1987年卒業アルバム

 今回はいつも微笑を絶やさず、慎み深い桝本先生にお話を伺いました。先生は昭和三十七年にも一度出て頂いています。初めのうちは遠慮されていたのですが、どうしてもとお願いして引き受けてもらいました。

 先生は戸山高校に三十三年も居られるので、誰よりも戸山生をよく知っていらっしゃるのではないかと思い、聞いてみました。「昔の戸山生と比べ、確かに変わった所もあると思います。でも、一方で言い表せない何かが貫いて流れていますね。今の生徒は明るく活発です。昔の戸山生も好きですけれど、今の戸山生も大好きです」と嬉しいお言葉。

 さて、子供の頃の先生はと言うと「武蔵野の大地をのびのびとかけ回りましたね。勉強ですか?そうですね、嫌いではなかったですから普通にやりました。今みたいに受験を気にしてカリカリとはしませんでしたね」とのこと。今の先生から考えると、少し信じられない気もします。そんな先生の昔からの趣味は読書。「本を読むことにエネルギーを集中してきたかなあ。やはり好きな本を集めることは最大の喜びですね。国木田独歩の「武蔵野」は自分の住んでいる所でもあって親しみがわきますし、ゲーテの語録もよく読みます。他には、辻邦生や井上靖など。僕はあまり流行の本には飛びつかず、昔から良いと言われた本を選びぬいて読みますね。その為に読みたい本のリストを作り、それをどんどん消化するんです」と目を輝やかしておっしゃっていました。授業に見る先生の博学さはここから来ているのではないかと思います。

 世界史と先生の関わりについては「好きなドイツ文学について調べていくうちに歴史が好きになってきたようです。また、旧制高校のときに教わったヨーロッパの宗教と歴史の関係にも強く興味を示しました。そんな所から世界史というものを選んだのでしょうね。世界史の面白さは、人間の多様性、無限の深さ広がりが見えてくることです」とおっしゃられました。これから何をしていかれるのかに対しては「自分を点検してみると分らないことだらけなんです。だから、それらを少しずつ掘り下げていって、理解して行きたいと思います」とのことでした。

 桝本先生の人格に触れてみて、改めて立派な尊敬すべき先生だと思いました。
                            (麗しのサブリナ)

枡本 摂郎 先生 世界史 戸山高校在職 1952〜89



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