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SSH米国サイエンス研修
 平成27年1月、母校ではSSH(スーパーサイエンスハイスクール)事業の一つとして米国研修を行いました。
 この度、研修引率の田中義靖先生、現地で研修の仲介・案内いただいた米国駐在のホーン川嶋瑤子氏(昭36)からレポートが届きましたのでここに掲載します。
 本研修には、城北会および深井奨学財団も支援をいたしました。

田中義靖先生報告


SSH米国サイエンス研修

                                  SSH部主任 田中義靖

 平成27年1月5日から本校SSH事業の一環でアメリカ合衆国へサイエンス研修に行ってきました。参加生徒は20名でした。
 英語を使った実験などは国内でも充分に体験させてきたので、今回の研修では、対話と研究および発表の手法を学ぶことを主な目的としました。

1月5日
 初日は夕方日本を出発して、同日のお昼ごろにサンディエゴに着きました。昼食後にスクリプトにある海洋学の研究施設を訪問しました。
 海洋中の二酸化炭素濃度を変えて生態系に与える研究をしている大学院生による説明を英語で受けました。
 自分自身の進路として、このような施設で研究したいが、どのようにすればいいかと案内役の大学院生に相談している生徒もいました。

1月6日
 ロサンゼルスにある公立高校(Los Angeles Center for Enriched Studies)に移動して、一般の高校生にも英語で自身の研究成果を説明するという課題に挑戦しました。質疑応答で苦戦しているようでした。

1月7日
 サンフランシスコに移動して、スタンフォード大学に行きました。大学の広大な敷地に生徒たちは圧倒されていました。本校卒業生の川嶋様に仲介していただき、日本人の研究者たちと昼食を取りながら懇談しました。英語が自由に話せないこととアメリカでキャリアを積むことの関係などに話題が集中しました。生徒たちの興味がどこにあるか知ることができました。
 昼食会のあとは、ロースクールや理学系や医学系の施設を日本人研究者の案内で見聞しました。理学系の施設では人工的につくったダイヤモンドを利用する研究について、研究者本人から説明を受け、研究装置も見させてもらいました。

 研究施設の見学を済ませたあとは、コンピュータ歴史博物館に移動しました。こちらでも川嶋様が仲介してくださり、現地のコンピュータ関係の企業に勤めていらした方々に展示物の説明をしていただき、生徒たちはイノベーションが生まれる瞬間を実感することができました。

1月8日
 この日はナパにある私立高校(New Tech High School)に行って、その学校で実践されているPBL(課題探究型学習)を現地の高校生徒たち一緒に体験しました。
 メインの質問が提示され、グループ内でパソコンをつかったりして調査し、得られた成果を発表するところまで体験しました。
 発表の仕方には学ぶべき点が多々ありました。

 この日の夜の便でサンフランシスコを発って10日の朝に帰国しました。

 生徒たちにとりまして英語での会話を多く経験し、英語で課題発見や調査する手法について勉強する機会を得て、英語での発表への意欲が増しました。

以下は生徒の書いた紀行文です。 

<紀行文>

 アメリカに行って土地やスーパー、学校などビッグな世界を見ることができました。その中には僕たちのあこがれるような研究施設や大学がありました。世界のトップクラスの人たちが集まる所で、日本の方々も一生懸命自分の目標に向かって歩んでいらっしゃいました。
 世界で活躍する人材になるためにはどういうことをしたら良いのでしょうか。僕はスクリプス研究所で活動しているタイ出身の学生の方に、このような所で活動をするにはどうすべきか聞きいてみました。すると、英語をたくさん勉強することも必要ですが、自分の研究したいことに明確な目標を持つことが大切だとおっしゃっていました。またNTHSで経験したように、なにかプロジェクトを成功させるには人とのつながりが大切であることも学びました。
 以上のように、僕らがSSHで活動していくには知識を増やすための勉強だけでは足りないものがあるとわかりました。今回の経験を忘れず、自分の目標に向かってこれからも努力していきたいです。

<紀行文>

 川嶋様、このたびはSSH海外研修スタンフォードでの様々な企画を計画していただきありがとうございました。スタンフォードの歴史とともに案内していただき建物の魅力がより伝わってきました。スタンフォードの星所長様や、多数の客員研究者さんとのお話は滅多にできることではなく本当に貴重な体験となりました。もう少し研究についてのお話をききたかったです。そのあとの研究者さんの研究についてもとても興味深かったです。
最後のコンピュータ博物館も滅多に見ることのできないコンピュータが展示されていて計算の所等は今後の研究の参考にできればいいと思います。
 また機会があればお会いしたいです。
 今回の貴重な経験を今後に役立てていこうと思います。

<紀行文>

 今回の研修で現地では3日間という短い期間ではあったがたくさんのことを学び、日本では感じられないことを感じることができた。自分の英語の能力について、もっと勉強しなければいけないなど悔しい思いもしたが、一番感じたことは伝えようとする意志が大切であるということだ。難しい英語を話すことや完璧な英語を話すことはたしかに素晴らしいことである。しかし、そのような英語を話せないから黙っているのではなく、積極的に質問や発言をして自分の意思を伝えようとすることが必要である。スタンフォード大学で現地の方と話したときには次から次へと出てくる意見、自分から積極的に話す姿勢に驚かされた。また、英語で聞かれていることは理解することはできるが日本語でもどのように答えればいいかわからないことがあり、そのため黙っていると相手さ自分の質問がうまく伝わってないと思ってしまうことがあり、うまくコミュニケーションがとることができなくなった経験をした。私は言語の問題ではなく、自分の性格を積極性があり、はっきりとした意志をもつようにしていかなければいけないと思った。

<紀行文>

 私は、将来は国際社会で活躍する研究者になりたいので、海外の研究所や大学を見て視野を広げたいと思いこの海外研修に参加した。
 3泊5日の日程で、1日目はスクリプス海洋研究所、2日目はLos Angeles Center for Enriched Studies高校、3日目はスタンフォード大学とコンピュータ博物館、4日目はNew Tech High Schoolにそれぞれ訪問した。その中でも特に印象に残ったのがスタンフォード大学だ。
 大学は、まずキャンパスの広大さに圧倒された。そのほかにも日本の大学とは大きな違いがあり、カルチャーショックをうけた。日本人の客員研究者の方々との交流では大学の内側のお話も聞けて、とても興味深かった。
 私は小さい頃アメリカに住んでいたので英語はほぼ不自由が無いのだが、スタンフォード大学で「英語がしゃべれても中身がなければ意味が無い」というお話を聞いて、将来の夢を実現するためにはしっかりとした「中身」が必要だということを学んだ。そのほかにも、様々なことを経験できて、非常に有意義な研修となった。この研修での経験を将来に生かし、戸山高校が誇る卒業生になれるように努力していきたい。

<紀行文>

 1月5日17時頃、期待と不安を胸に日本を発った。サンディエゴに着いた後、数十分の自由時間があったが、そのとき初めて英語を使った買い物をした。それはむしろ英単語に近かった。その後スクリプス海洋学研究所へ行った。海の水質、生物等を研究しやすい造りの建物で、多くの被験生物が管理されていた。初めてまともな英語を聞いたが、まだ耳がついて行けなかったことが悔しい。
 アメリカに着いて2日目、この日はロサンゼルスの高校で各々の研究を発表した。英語で伝えることは、日本語のそれよりも遥かに難しかったが、反省点も残り次に繋がる充実した時間となった。
 3日目は主に、スタンフォード大学の見学だ。そこでは、大学の歴史や施設の説明、現地の日本人の方々のお話を受け、日本との大きな違いを耳で体感できた。
 最終日、ニュー・テクノロジー高校という、独特な授業制度を持つ高校を訪れた。主にパソコンを使い、先生がただ教えるだけではなく、テーマに沿って自分たちで調べ学習、発表をするという授業だ。始めは話しかけることすら困難だったが、相手の友好さもあって幾つかの質問もした。些細だがとても嬉しかった。
 今回の研修で深く感じたのは、日本とアメリカの環境の差だ。研究するにしろ何にしろ、アメリカが優れているよう思えた。近い将来、アメリカの大学にまで視野を広げたい。

川嶋瑤子氏報告


「戸山の生徒20人のスタンフォード&シリコン・バレー訪問」

                  ホーン川嶋瑤子(昭36、スタンフォード博士課程修了)

 スタンフォードは、全米のみならず全世界から優秀な学生、研究者が集まる著名大学である。スタンフォードの周辺に発展したシリコン・バレー(SV)には、HP、アップル、ヤフー、グーグル、フェイスブック等のIT企業やバイオテク企業が集まり、技術革新の発信地となっている。
 そのスタンフォードとSVを、戸山高校の生徒20人が1月7日に訪問した。大学中枢部分である最も古い回廊式建物と教会、フーバー・タワーを見た後、日本人教授や客員研究者、博士課程学生との会話セッションを持ち、人文系、理工系、さらにバイオメディカル系についての説明を受けながらキャンパスを回った。その後コンピュータおよびSVの発展を学ぶために訪れたコンピュータ歴史博物館では、長年SVのIT企業で働いた3人のエンジニアの説明を受けた。
 最近はアメリカに来る日本人留学生数は減少が続いており(スタンフォードには約60人、しかし1995年頃のピークの3分の1程に減少)、若い世代の内向き、留学嫌いが指摘されている。しかし、戸山の生徒たちは、スタンフォードでも博物館でも積極的に発言し質問した。英語学習や留学にも高い関心を示した。今回の海外研修が、広い世界に目を向けて、大学進学や仕事をチャレンジ的に考える大きな刺激となれば素晴らしいと思う。

                                              以上
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