志村五郎君(昭22)が、昨年の「中国説話文学とその背景」に引き続き、今年、「記憶の切絵図」という本を出版しました。
前回の「中国説話文学」は、世界的な数学者が"中国古典の説話、随筆、短編小説、歴史の断片などを蒐集して、自分が得た
新鮮な驚き、感動、あるいは哄笑などを多くの人と頒ちあいたい"ために書かれたもの(著者の言葉)であり、昨年の城北会誌
第55号でも、同期の粟野茂穂君が紹介しているので、ご覧になった方もあると思います。
これは、数学者が本業の傍ら、中国説話などを長年こつこつと集め、訳し、解説を施すとともに、随所に新発見、新説、新釈を加 えたもので、その意味でも珍しい本でした。
これは、数学者が本業の傍ら、中国説話などを長年こつこつと集め、訳し、解説を施すとともに、随所に新発見、新説、新釈を加 えたもので、その意味でも珍しい本でした。
これに対し、今回の著書は、いわば自叙伝風のもので、ご本人によれば"普通の本"で、前著に比べれば当然読みやすい本ですが、ただ、単なる回想に止まらず、それぞれの箇所に、自分なりの意見、感想が加えられており、そこが興味をそそられ、見逃せないところです。
まず、題名の由来ですが、ご存知のように、江戸末期に「切絵図」という地域ごとの案内図が出版されていましたが、そのなかの「大久保戸山高田辺之図(1851)」に、彼の5代の先祖(志村小三次)の住所が表示されており、そこが彼の少年時代から中学時代あたりまでの活動エリアであったのです。
われわれが在学した旧四中については、相当のページを割いて記述されていますが、入学試験に始まり、勤労動員のこと、きびしいしつけのこと、東京空襲のこと、それに伴う市民の無差別大量殺戮のことなど、当時の思い出が淡々と綴られています。これらはわれわれ同期にとっては懐かしい反面思い出したくないこともありますが、若い方々には、日本の歴史の断面を知るよすがにな
るのではないでしょうか。
「記憶の切絵図」
2008年6月25日 第1刷発行
著者 志村五郎
発行所 株式会社筑摩書房
るのではないでしょうか。
「記憶の切絵図」
2008年6月25日 第1刷発行
著者 志村五郎
発行所 株式会社筑摩書房