平成21年1月17日付夕刊読売新聞、および7月29日付日本経済新聞コラム「文化往来」で、代表的な日本のお伽話「桃太郎」を明治時代にオペラ化した作品「ドンブラコ」を、音楽評論家で指揮者の宇野氏が女性合唱団アンサンブル・フィオレッティの歌声で約100年ぶりにCDでよみがえらせたと報じています。このCDは、5月27日発売、通常価格3000円。
指揮の宇野氏は、昭和24年母校卒業、国立音楽大学音楽科卒業、合唱指導を目指しました。しかし高校時代、当時の名指揮者ブルーノワルターに熱烈なファンレターを出し、長文の返事が届いたことで、レコード雑誌から原稿依頼が殺到し、以後心ならずも評論が主、合唱指導は従となりました。
しかし、名前が知られるようになったため、オーケストラからも請われるようになり、その個性的な演奏が評価され、コンサートの多くがライヴCD化されました。
宇野氏は、無声映画弁士から漫談家に転じた父、牧野周一から日本の話芸を受け継ぎ「語り上手の評論」で頭角を現し、背景が重なる北村氏を「明治のハイカラな教養人」と評しています。
さて内容ですが、おなじみの配役の桃太郎、おじいさん、おばあさん、鬼退治に同行する犬、キジ、サルなどを演じるのはアンサンブル・フィオレッティ合唱団で、せりふのほか、独唱、合唱をピアノ伴奏で歌います。言葉づかいは古いですが、テンポがよく、動物の鳴き声や「ジャブジャブ」「ペンタラコ」といった擬音語も豊富、迫力ある演奏で聴いているだけで物語が浮かんできます。鬼と対決する場面では音楽はなく、無声映画で語る「活弁」のような描写。フィナーレの凱旋では木遣りもうたわれます。そして「ひらいたひらいた」「通りゃんせ」「かすみか雲か」など、聞き覚えのあるメロディも次々、日本語が自然ではっきり聞こえ、親しみさとともに新鮮さを感じました。
なお、アンサンブル・フィオレッティは、ルネッサンス、バロック期の音楽をはじめとして現代までの作品をレパートリーとして結成されました。そして、2000年からは宇野氏の情熱に応えて、忘れられようとしている日本の歌曲や童謡の名曲の再生を共に行っています。
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