先生列傳(30)森川先生 戸山高校新聞 第39号 1954年7月20日
 「職員室一のソバ好き 蠻声一番歌う寮歌」


1960年発行先生列伝小冊子

1957年卒業アルバム

 名前の通り少年時代は和歌山県の森や川の間で過したといわれる。生物に志ざされたのもそうした環境に負う所が大きいようだ。中学時代に作つた生物の標本は相当なもので、卒業に際し学校から表彰されたそうだ「その時の賞状にオヤヂの名前が書いてあつてね・・・」と眼を細めて笑われる先生の顔は太つて子供のように丸い。

 高校時代、ご自身自治会役員として活躍された経験のある先生は、本校生徒会活動にも深い理解と関心を示され、生徒たちのよい相談相手ともなつておられる。またいろいろの役員としての肩書きを持たれる先生の御日常はかなりお忙しい。

 大正四年生まれの先生にはまだ若い血が流れている。ホームルームの時間に母校三高の逍遥歌をばん声一番どなりまくられる先生は、われわれにとつて非常に親しみやすい存在である。

 御趣味は写真、運動会、遠足等、ミノルタ35を駆使する先生のカメラマン振りを見た人も多いだろう。先生はシヤツターをきるだけでなく、焼付け、引き伸しも御自分でなさる。

 先生のソバ好きは職員室随一、昼休みの小使室にソバをたべる先生の姿をみつけないことはない。高田馬場近辺のそば屋の知識は生徒でも先生の右に出るものはまずあるまい。そばについては奥さんの内助の功もなかなかで、その手製のそばのうまさはお宅に伺つて、ご馳走になつたことのある人ならだれでも知つている。

 そばの故でもなかろうが、先生の体重は今では十九貫、ずんぐりと太つておられる。その先生も高校時代の仮装行列では、うら若き早乙女に扮したスマートさ(?)だつたとか。

 先生が声を荒げてニヤニヤしているのを見たら、怒つていると考えて間違いない。声量いつぱいどなられて、ひやつとしてふせた顔をおそるおそる上げてみると、先生の顔には微笑が・・・やれやれとほつと一と息入れると、とたんにまた一発。全く先生の怒り方は生徒泣かせ。でも怒るのは年に一度ぐらいのもの。

 初めての授業のとき、先生は必ずこういわれる。「私は絵を沢山描きますからね、覚悟していて下さい。」事実沢山書かれる。そして上手い。黒板の絵に自惚れているうちに知らず知らず得た知識は実際に役立つことも多い。

 生殖、発生、遺伝等、先生お得意の講義の間には未来のわれわれの結婚生活への訓示も顔を出す。非常に重要でありながらとかくあいまいにされ勝ちな、こういつた問題の指導者としても先生はまさに適任であろう。「僕も年をとつたら好きな研究でも始めますよ。」といわれる先生はまだまだ若い。いずれ生物教室でも建てば、先生の巧みな実験の授業も充分にできるであろう。先生の今後に大いに期待して記者は筆をおく。(H・O&科斗)

森川久雄先生 生物 戸山高校在職 1950〜56



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