今回の先生列伝は、今年明正高校から赴任してこられた物理科の黒田先生です。
先生は教育大(現筑波大)の物理学科のご出身。教育大に進まれた動機は、朝永先生(ノーベル物理学賞受賞者の朝永振一郎博士)の講義を聞きたいと思われたからだそうです。高校時代はさぞや物理がお好きだったんだろうと思いきや、「高校のときは僕自身もあまり物理が好きじゃなかった」そうです。でも「大学に入ったらとてもおもしろくなって、それなら高校生にもっと易しく楽しく教えられると思った」ので教師を目指されたそう。「でも現実は厳しいですね」と苦笑しておられました。
戸山高校の印象についてお聞きすると「いい生徒が多いです。ここぞというときに粘りがあるね。だから、戸山祭を楽しみにしています」とのこと。そして「戸山生に限らず最近の高校生は全般的にみんな素直で明るい。でも昔に比べて勉強と遊びが両立できなくなってきていると思う」とおっしゃっていました。「人に迷惑をかけないで勉強との両立ができるなら、どんどん遊んでいい」。そして「特に二年生へ。できるだけ(夏休みなどに)旅行するようにしたらいい。視野が広くなるし、親元から離れる練習になる」とアドバイス。
先生は終戦の年の昭和二十年に埼玉県の浦和でお生まれになりました。幼少の頃は「やせていてご飯が大っ嫌い」だったそうです。(でも今は好きで好きでたまらないとか)
小田急線の和泉多摩川駅の近くに住んでおられ、多摩川にはよく三人のお子さんを連れて遊びに行かれるそうです。魚とりが趣味で、しょっ中どろんこになって帰られるので奥サマに「我が家には子供が四人いる」と言われているとか。先生いはく「実は子供よりも僕の方が楽しんでいるけど、やっぱり大の大人がはしゃいでいるとみっともないから、遊ぶときには子供のためにやっているというポーズをしています」。
「子供はそのうち(親から)離れていくだろうから、今のうちに楽しんでおこうと思っています」とシビアな考えをもっておられる反面、「いちばん下の子が一歳半でね。“だめ”と“いや”ばっかり言うんだよ」などと目を細めておっしゃいました。お子さんについて話される先生はとても楽しそうで、まさに“目の中に入れても痛くない”という感じを受けました。
生徒のことを心から考えて下さる先生。物理が苦手な人は、“物理10倍好きになる方法”でも伺ってみては? (そうせき)
黒田楯彦先生 物理 戸山高校在職 1983〜95