本年度最後の先生列伝。今回の御登場は、数学科職員室に咲く一輪の花、橋本由美子先生です。
愛知県岡崎市でお生まれになった先生ですが、幼い頃は変わった子供に見られていたそうで、「学生時代は何の目標も定まらず、主体性もなくて、ふわーっとただ周囲に押し流されて大きくなってしまったんです。困ったもんですね」と話されました。そんな先生が女性には珍しい数学の教師になったきっかけを聞いてみました。「高校生の頃、化学がすごい得意だったので、大学では薬学をやろうと思っていました。けれど、濃硫酸が怖くて、私っておっちょこちょいだし……計算間違いは笑ってごまかせるけど、濃硫酸を手にかぶっても笑い事では済まされない、と思って数学をやろう、と決意しました。教師になる決心をしたのは、教育実習の時。とっても楽しかったので。教師をやって良かったと思っています」と語ってくださいました。
趣味をお聞きすると、「体力づくりと、料理をして自分で食べる事、健康食品の研究と手芸と音楽と読書」と実に多岐にわたっていらっしゃいます。音楽は「ジャンルにとらわれずに何でも聴きます。佐野元春は好きですね。あっでもカラオケは音痴なので駄目なんです。若い頃は、ハードロックをよく聴いていました。もう“今は昔”の話ですけど」。新宿にあるロック喫茶や、ライブハウスに入り浸っていた日々もあったそうです。読書については「三島由紀夫や渡辺淳一等、人間の葛藤や煩悩を扱ったものが好き」だそうで、数学のように論理が明確なものを扱うと、逆に理屈では割り切れない人間の感性(文学や芸術等)に深い憧憬を抱いてしまうそうなのです。マンガはあまり読まれないそうですが、「ゴルゴ13」の大ファンで「有り得そうもないかっこ良さが007みたいでいい!」と力説されました。
「人生一回限りだし、未来を見据えて明るく楽しくそして一生懸命生きていく」という自己哲学を語る姿、御自分の青春時代を話される時の目、そして授業中にドジを踏んでしまう時の表情――そんな中に、“二十代の乙女”のありのままがチラリと見えたような気がするのです。
最後に、「初恋はいつですか?」と尋ねると、はじめははにかんでいて、いつの間にか憂いを含んだ表情になって「恋する時はいつも初恋です」。
(多忙は釈迦牟尼だ!)
小池(旧姓橋本)由美子先生 数学 戸山高校在職 1984〜86