先生列伝(91)三井先生 戸山高校新聞 第233号 1989年7月3日
 「広い視野持て戸山生  ――三井二仁先生の巻―― 」


1988年卒業アルバム

1991年卒業アルバム

 三井先生というと、その特徴ある髭と、颯爽とした自転車登下校で有名だ。今回の先生列伝では、その三井二仁先生(数学科)の登場である。
 先生は東京生まれの東京育ち。「小・中・高・大学と平凡に出ましたね」とおっしゃる。中学時代、部活動はワンゲル部に入っておられたそうだ。高校に入ると学校の既成の部活動では飽き足らず、自らエスペラント(世界共通語)同好会を設立された。その後大学に進まれてからは、気ままに山歩きを楽しんでおられたという。時には一人テントを持って山へ出かけたこともあるそうだ。
 そのような先生が、なぜ数学を職業として選ばれたのだろうか。先生は、小学生の頃から数学の世界には惹かれるものを感じていたとおっしゃる。(しかし五段階評価で二を取ったこともあるとか)。社会科も割合得意だったが、その反面ごまかしの多さには不満を持っておられた。「例えばエジプトでは王の墓も掘って調べるのに、日本では天皇の墓は掘り起こさない。掘れば事実がわかるのに、掘らないで推測ばかりしている。そういう所が嫌だったんです。しかし自然科学にはそんなごまかしや隠し立てはない。その中でも数学は、統計で数によって事実を示すことができる。だから世の中を引っぱるのは自然科学ですよ」と先生は熱っぽく語られた。「しかし実際には、今の世の中ごまかしばかりですけどね」
 次に最近の戸山生についてどうお思いなのかお尋ねしたところ、集会などに参加する時の戸山生の態度の悪さを指摘された。「人の話を聞いて、その上で的確な判断を下して欲しい。いくら成績が良くても、それができなければ、社会では全く通用しないのですからね。演説者の話を聞いて、納得がいかなければ直接抗議に行くぐらいのパワーを見せてもらいたいですね」また、先生は読書の重要性を強調されこう語られた。「人生のうち、人が体験できることは限られているのだから、本によって自分では出来ない経験もどんどん知って欲しいね。そして幅広い視野を持って欲しいですね」先生の言葉には私達への期待が込められていた。
 いつも温かな、そして科学的な目を湛えている先生。そんな先生の目の中には、現代社会の悪に屈さない潔癖さと優しさが感じられた。先生というものは、やはりその専門の知識だけから先生と呼ばれるのではないだろう。三井先生には、これからも大いに私達をけしかけて頂きたい。
                      (原人ビビビ・原人ボボボ)

三井二仁先生 数学 戸山高校在職 1984〜97



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