前教務部部長。今年度の二年生が使用している教科書の執筆者。このようなことでも名が知られているのが、数学科の小沢健一先生である。
先生は一九四二年、埼玉県秩父市でお生まれになった。県立熊谷高校卒業後、東京教育大学(今の筑波大学)に入学。理学部数学科で微分幾何を専攻された。高校は男子校であったため、雰囲気はいわゆる「バンカラ」。生徒は皆、学生服に下駄という姿で通学していたそうだ。小沢先生も三年間を通して下駄で通っていたのである。高校時代に靴を履いた機会と言えば、修学旅行の時が唯一だとか。
さて、先生は昔から数学が得意で、また好きだったそうだ。教職に就かれた理由も、「数学そのものの楽しみを教えたくて」ということだから、相当の数学好きである。
この、数学の楽しさを伝えたいという先生の心意気は、授業だけでなく執筆された本にも感じられる。ある計算法則が、実は日常生活の中の事例と同じであることを教える。問題をただ解くことだけが数学ではないことを気付かせる、という風に。ある著書の中では、数学が題材の笑い話や小説まで創られている。また、数学を楽しむ「おもちゃ」を数多く発明していることにも、先生の数学に対する思い入れを知ることができよう。中には商品になってしまった物(写真)もある。
このような先生であるが、数学を「教える」ことにはとても謙虚でおられる。先生いわく、「わたしのせいで数学がわからなくなる人も多いんです」。「教えることは学ぶこと、というのは本当ですね」という言葉からも、先生の丁寧な人柄が伝わってくる。
ところで、小沢先生が戸山にいらしてから今年で十三年目である。その先生が、戸山の誇れる物を三つ挙げて下さった。それは、戸山祭・生徒規範・全天候型の(選択科目の少ない)教育過程。先生は、高校生の成長につながるとして、これらの意義をよく考え、そしてこれらを守っていくことを我々に望まれている。先生が教務部長をなさっていた時、戸山を訪問した他校の先生方によくこの三つの誇れる物を説明されたそうである。すると必ず、「(失くさないよう)頑張って下さい」と励ましを受けたとか。
御趣味についてもお話を伺った。読書と、友人の方々と勉強会を開いたり、酒を飲んだりということが、最近の楽しみだそうである。読書は古くからの趣味で、高校生の頃は漱石や芥川などを読まれたそうだ。近頃は芥川・直木賞受賞作品のすべてに目を通されているそうである。また、井上ひさしの作品はすべて読み、次作を待たれている程。
先生は、興味を持たれた多くのことを、実行に移されている。これも、先生の誠実さ故に可能なことなのであろうと、取材の後に深く感じた。
(先生と同じAB型のねい)
小沢健一先生 数学 戸山高校在職 1979〜92