授業中は多くの冗談で笑いをとる阿部先生だが、インタビューには最初、あまり乗り気ではなかったようだ。「話すことなんかあまりないぞ」と言いながらも、冗談を交えながら明るく語ってくれた。
先生は学生の頃について、御自分で「真面目だったなあ」という位、真面目だったそうだ。中学では生徒会活動に熱中。時の首相、吉田茂氏などに憧れ、政治家を目指したという。しかし、次々と暴露される政治化の汚職に「嫌気がさした」という。高校に入ってからは生徒会も政治家も忘れて、大学進学のために勉強ずくめの生活を送る。教職を意識し始めたのは、この頃だという。
ここまでの話だと、窮屈な程真面目な学生生活だったように思えるが、先生自身は「楽天的」だったという。そんな先生の性格を表わすエピソードだろうか、次のようなことを語ってくれた。大学入試の時のことである。先生は前述の通り教師を目指していたが、同様に心理学にも興味をもっていた。そこで心理学科を受験。見事合格したのだが、実は心理学科では教員試験を受けることができない。そのことを知ったのが、入学後のオリエンテーションの時だったという。それでも「心理学科も面白い」といい、四年後同学科を終了した後、改めて国文学科の三学年に編入したそうだ。先生は当時のことを振り返って、「別に失敗だとは思わなかったよ」との弁。
先生は御自分の体験を授業の場でよく語られるが、その中でも盛り上がるのが、「恋愛」についての話。そこで、この話題に触れてみたのだが、先生のおっしゃったことは至極単純明快なものだった。「(女性は)楽天的な人がいいね」の一言。「学生時代に失恋した相手が、悲観的で現実的な人だったから」だそうだ。
教師になられてから今年で二十三年。これまでの教師生活はあまり変わりばえのないものだったそうだ。先生御自身は、「(先生らしくない先生を目指していたのに)先生らしくなっちゃったなあ(笑)」という。飾らないというか、気負いのない先生、といったところであろうか。 (レレレ)
阿部興先生 国語 戸山高校在職 1983〜93