桑島良平先生が戸山高校に赴任されたのは、昭和六十年。当時の生徒の印象は「自由闊達で自分勝手、そしてよく勉強する」ということで、十二年間で変わったのは「勉強をあまりしなくなった」ことだそうだ。
先生は兵庫県三田の生れだ。中学三年生のときにお父さんが亡くなり、お姉さんの嫁ぎ先の神戸のパン屋を手伝うなら、という約束で神戸の高校に進学された。朝夕パンの配達をしながらの通学は大変で、人生で初めて挫折を感じられたという。卒業後は東京で働きながら大学に通われた。日本全体が貧しい頃で、食べるのが精一杯の生活だったそうだ。
そんな中でフランスの小説家バルザックの作品に出会い、世界史に興味を持たれた。
桑島先生は昭和三十五年頃から三十七年間教鞭を執り続けてこられたが、今年で退職される。その後は「生徒が授業で持った疑問・感想をまとめ、本にしたい」とおっしゃった。「先生にでもなろうか」という気持で教師になられたが、「今の趣味は授業」「教師が天職だった」とも言われる。人と接するのがお好きなようだ。
生徒へのメッセージを伺ってみた。「知的好奇心を常に持つことが人間を常に向上させる。いろいろなことに興味・関心を持ってほしい」「生活の全てが歴史と関わっている」とおっしゃる先生は、歴史を通して様々なことに興味をお持ちのようだ。
桑島良平先生 世界史 戸山高校在職 1985〜97