辻萌夏さんにインタビュー 囲碁の全国高校選手権で団体・個人同時制覇の快挙!

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平成28年度の「第40回文部科学大臣杯 全国高校囲碁選手権大会」で女子団体、女子個人の同時優勝という快挙を達成された辻萌夏さんに、ホームページ部会と城北会誌部会が共同インタビューしました。選手権の記録は下記をご覧ください。

第40回文部科学大臣杯 全国高校囲碁選手権大会 女子団体
第40回文部科学大臣杯 全国高校囲碁選手権大会 女子個人

interview1   interview2

(全国大会優勝おめでとうございます。いつごろから囲碁に興味をもたれました?)
埼玉県に住んでいた3歳の時アニメの「ヒカルの碁」を見て興味を持ちました。始めたのは4歳になる頃です。最初は近所のおじいさんに教えてもらいました。同じくらいの歳の子とするのが良いということで小学生のとき緑星学園という囲碁教室へ通って囲碁を始めました。

(すぐ面白くなりましたか?)
昇級するのが楽しかったです。小学校1年生の時に初段になりましたが、同じ年頃の同レベルの人がおらず、年上の人と対戦することになり全然勝てなくなりました。楽しくはありましたが勝てなくなったという実感を持ちました。

(小学校で選手権など出られましたか?)
小学校2年生のとき宮城県に引っ越しました。3年生の時に男女混合の団体戦に全国大会に出ましたが1回戦負けでした。4年生の時に女流アマ選手権に宮城県代表で出ました。県レベルの最年少優勝者で選手宣誓をしましたが1回戦で負けました。まだ弱いのに勘違いしていました。

(プロの道をめざしたことはありますか?)
宮城県で囲碁教室に通っていて、そこにプロの宋光復先生が指導に来てくれました。小学校5年生の時東京に引っ越しました。宋光復先生からプロを目指すならプロを目指す人がたくさんがいる洪(ホン)道場に通い、同時に宋光復先生の弟子にならないかと誘われました。その時はプロになる、ならないということを考えておらず、碁が楽しくて打っていただけでしたが、父母に相談して洪道場に入りプロを目指しました。洪道場は有名なプロ棋士を輩出している道場です。小学校6年生から中学2年生まで本格的にプロを目指す人たちがいる日本棋院の院生に入っていました。中学2年の時に、高校に進まずにプロを目指すか、高校に進学するかの選択をしなければならなくなりましたが、高校進学を選んで中学2年で院生をやめました。一番一生懸命やっていたのは中学生の時で洪道場と院生になって週6日やっていました。

(戸山にはいったときはどのくらい強かった?)
戸山高校に入学した時はアマ六段でした。アマチュア囲碁には七段までしなく七段は全国優勝するようなレベルの人たちで、普通の人は六段まででした。

(戸山はいってからの活動は?)
戸山高校には戸山が初めて団体戦準優勝した時の稲永萌黄さんがいました。戸山高校は都立高校ですし囲碁の強い学校だと思って入学しましたら、囲碁をする女子が全然いませんでした。同じように勘違いして髙久さんも入学していたので結果オーライでした。団体戦は1チーム3人なのでもう1人いないと団体戦に出られません。私たち2人とも有段者だったのでもう一人見つけるぞ、という意気込みで3人目を探しました。

(そのほかに戸山の魅力は?)
制服がなく自由で、ということでしょうか。SSHも考えましたが、大変そうだということでやめてしまいました。囲碁の強い人は理系に強い、数学に強いと言われていますが、私は文系に興味があります。

(高校時代の囲碁の活動は?)
戸山高校の囲碁部では私は後輩が団体戦に出るために団体戦3人目の人を強くするコーチのようなことをしています。学校の外では大会前の時だけですが、中学3年の夏まで通っていた洪道場へ行ってプロを目指している人たちと対戦したり、高田馬場の碁会所で早稲田大学の囲碁部の人たちが練習会をしているので、それに参加させてもらいました。洪道場の友達が早稲田大学の付属校に通っていて、その人に誘われて行きました。結構フレンドリーでした。

(どうして優勝できたのでしょうか?)
今年は受験勉強があって東京都の予選までは早稲田大学の練習会に参加していましたが、東京予選以降は受験勉強があり全く打たずに全国大会に出ました。それをいうと怒られるのであまり言いませんが(笑)。それがリラックスできてよかったかもしれません。1、2年生の頃は院生だったことなど意識して緊張で勝てずに自信を失いかけていました。「院生のような強い相手はいないのにどうして勝てないの」と言われましたが、受験生になって「負けても逆に勉強時間が増える」と思えるし戻れるところがあって、それが良かったと思います。(クールに打てたということですね)スポーツと違って空白があってもやらなくてもそれほど力が落ちることはないので、アマチュアで打つぶんにはよかったのかなと思います。

(高校の選手権ではプロをめざしている人と戦いましたね?)
高校選手権大会ではプロを目指している人も参加します。決勝で対戦した福島さんは洪道場に通っていて宋光復先生の門下生でよく知っています。私は決勝まで来られたし、と思えてリラックスできましたが、福島さんは本格的な囲碁をやめた人には負けられないと思ったかもしれません。私は負けても言い訳できると思っていました。(笑) 勝てるとは全然思っていませんでした。あるレベル以上になると精神力がないと一手一手が消極的になってしまうので精神力が重要になるのかなと思います。

(囲碁と勉学とのバランスは?)
中学2年で囲碁はやめて中学3年生の時は受験勉強をしました。戸山高校進学が決まって4月くらいまでは洪道場に通いましたが、入学すると学校の課題が多いのであまり囲碁はしなくなり、気が向いた時、週2日打つくらいになりました。(普通の高校生をやっていてチャンピオンになってしまったのですね?)そうなんです。

(優勝して大学からのスカウトなどありましたか?)
囲碁推薦入学のある関西の大学から誘いがありましたが、東京にいたいので応じませんでした。一般で受験する予定です。大学生になったら団体戦に出たいので強い大学へ行きたいと思います。早稲田、慶応、東大が強いです。

(大学にはいってからの囲碁は?)
早稲田大学の人たちと話していると、大学の囲碁部も楽しそうです。プロを目指して本格的に囲碁をすると囲碁が嫌いになってしまうのではないかと思います。今までは知り合いも囲碁関係の人が多く、囲碁ばかりしているとコミュニティが狭くなってしまうかもしれません。大学に入って囲碁は続けますがそれだけでなくも色々な人と知り合いたいですし、色々なサークルも見てみたいと思います。(あの人は囲碁の人といわれたくないと。)そうですね。(戸山で文系理系わけずに広くやっているのが将来役立つかもしれませんね。)

(将来の職業などについては?)
大学進学は商学部を第一志望にしていますが、どの学部に入学するかもわからないので将来の職業についてはまだイメージできていません。教員などにも関心があって。(囲碁を介して人間関係が拡がることもありますね。)アルバイトで囲碁を教えることはいいかなと思います。数学は嫌いではないです。

(強くなるには?)
解けなかった詰碁の問題を考えたり、電車の中で単語帳の代わりに囲碁の本を見たりします。自分の対局の後、打った手を見直して、ここが悪かったとかここで損したのか、ここで先手が取れたはずだなど反省します。受験にも役立ちます。朝から晩まで囲碁ばっかりやっていたのを、勉強に変えればいいと思って高校受験は乗り越えました。大学受験も同じように意識しているのですが、スマートフォンなど楽しい誘惑も増えてしまい(笑)、できない時もあります。

(後輩を見てどうですか?)
男子で全国大会に個人戦に出るような強い生徒がいるのですが、同じくらい強い相手がいないので残念です。女子は今年優勝したので来年シードされます。シードになっても人数が足りないのではないかと心配しましたが今年2人入ってきましたので3人揃います。結構強いので勝ち進んでくれればいいと思います。

(戸山生という意識は?)
戸山生として特に意識して囲碁を打つことはありませんが、戸山生は上達が早いです。大会の講評などで専門家からも上達していると言われます。

(後輩へのメッセージは?)
戸山生の中に、黙っているけれど子供の時やっていた人が何人もいそうなので隠さないで囲碁将棋部に入ってもらいたいです。将棋はわりと全国大会に出るのがやさしいと聞きます。囲碁将棋部は兼部もできるし自分の都合のよい時間にできます。囲碁と将棋の分け方だけで男女の区別はしていません。

(今回の優勝で戸山に入りたいと思う囲碁の強い生徒がいるかもしれないですね?)
今でも元院生の生徒がいるので来年も入ってこないかな、と思います。私もホームページを見て戸山高校に囲碁をする人がいることを知りました。

(どうもありがとうございました。これからもがんばってください)